姫路市の情報システム最適化事業を約5年間にわたり支援
この事業を推進するうえで担当者が求めたもの、得られたもの、
その先に目指す新たな展望とは。
―「情報システム最適化」を推進されたきっかけを教えてください。―
原氏 「姫路市は、昭和50年代後半から長年大型汎用機を中心とした情報システムを利用してきましたが、度重なる制度改正への対応や本市の事務処理に沿った機能改善等により、本市独自の仕様で開発運用されてきた業務システムが複雑化していました。また、一つのベンダーに頼らざるを得ない、いわゆるベンダーロックインの状態がシステム維持管理コスト面での課題となっていました。さらに、今後の住民サービスの提供のあり方として、システムに汎用性がないために新しいサービスの導入やデータの活用、部署間の連携といった部分への対応も難しくなっていくと考えていました。私どもでは、そうした課題を解決していくために、大型汎用機から脱却し、オープン系のサーバー環境やシステムへと切り換えることにより本市の情報システム環境を最適化、標準化していこうという動きになりました。」
榎本氏 「具体的な時期としては、平成23年に国からの指針が打ち出され、平成24年度と25年度の間に現状分析と最適化方針の作成を行いました。そして平成26年度から31年度までの5カ年計画として“姫路市情報システム最適化計画“を始動させました。当初、私どもはオープン系環境に関する知識があまりなく、全国の自治体においても、大型汎用機から仮想化技術を利用した統合基盤への大規模な移行はあまり前例がないことだったため、情報収集や調達の部分で苦労しました。そこで、技術的な助言はもちろんのこと、姫路市の将来のことまで見据えたコンサルティングを担っていただけるパートナーを探していました。さまざまな企業の方にプレゼンテーションをしてもらいましたが、御社には熱意を感じたのはもちろん、本市を取り巻く状況を理解した上での提案がなされたので、業務をお願いすることになりました。」
―「情報システム最適化」を推進したことによる効果をお聞かせください。―
原氏 「現在効果が出ていると実感していることは、各業務所管課の情報システムの維持管理に関わる人材不足に対応できたことです。大型汎用機を利用した独自の情報システムを維持管理するため、本市ではある程度職員にも情報処理に関わる知識を習得してもらい運用してきましたが、そうした人材を確保し続けることが徐々に難しくなっていました。しかし、オープン環境を構築し、パッケージソフトに移行したことで、サーバー基盤やシステムの維持管理を事業者に委託することが可能となり、職員の負担が軽減されたほか、システム障害などのトラブルにも迅速に対応できるようになりました。今後は、システム改修や機能のアップデートといったメンテナンスにも柔軟に対応できるようになっていくと思います。
また、本市独自のシステム環境のもと行われていた事務プロセスも、徐々に標準化が進んでいくでしょう。カスタマイズを極力抑制したパッケージソフトにより再構築を実施したため、長年培われた作業内容から変えていく必要があり、再構築後は使いにくいという声がでたことも事実です。しかし、将来的なことを考えると、事務が標準化され、誰にでも使いやすく、後任の人員を教育する際にも分かりやすいシステムになっているのではないかと思います。
また、最適化を進める上でプラスとして生まれたことなのですが、サーバー基盤を庁舎内ではなく、外部データセンターを活用して環境を構築できたことでBCP対策にもなりました。以前から、災害に強い仕組み作りも課題でしたので、今回、最適化の取組みの一環として実現できたことも効果と言えるかもしれません。」
榎本氏 「市民サービスの一環として、コンビニで住民票や税証明が発行できるようになったことも効果の一つとして挙げられます。従来は、窓口や市内6か所に設置した自動交付機でしか発行できなかった証明書が、マイナンバーカードをお持ちでしたら、姫路市内にとどまらず全国のコンビニで朝早くから夜遅くまで取得できるようになりました。これもオープン系のシステムを導入し、外部サービスへ情報の受け渡しが可能になったことで実現したサービスです。」
―「情報システム最適化」にあたり、重視した点をお聞かせください。―
原氏 「これからますます人口減少、少子高齢化が進んでいくことを考えると、少ないコストでいかに市民サービスを維持、向上させていくかが課題と考え、コスト面を重視しました。ここでいうコストとは、情報システムを維持管理するランニングコストや人員に係るコストのことです。人口減少によって進んでいくであろう職員数の減少にも対応できるよう、現在より少ない職員数となっても情報システムを適切に維持管理できる状態を目指しました。それとともに、システムごとにベンダーに調達をかけて、本市にとってより最適なものを選択していくマルチベンダー環境も心がけていました。しかしながら、パッケージシステムの内容や提供する事業者を調査する手法、選定時の評価方法など、競争性を確保しつつ、よりよいシステムを調達するために必要となる知識や経験がなかったため、御社の支援を受けながら取組みを進めてきました。ここで培った調達プロセスは、「調達ガイドライン」としてまとめられており、継続的に運用しています。」
榎本氏 「今回でこうした取り組みに対する枠組みができたと思うので、今後は自分たちから実行に移していければと思います。一般の企業の方々と私どもでは風土が異なる面があるため、コンサルティングにおいて苦労をおかけした部分もあったかと思います。しかし、短期間で最適化を遂行するためには、御社のスピード感や、アドバイス頂いた意識の改革等は参考になり、私どもも役所内の風土を変えていこうと思いながら業務を進めてきました。」
―「情報システム最適化」以降の貴市の取り組みを教えてください。―
原氏 「今回の5年間の情報システム最適化の取組みは、令和元年度をもって終わりを迎えます。今後も、ユーザビリティの向上や保守管理といった面においては、継続的に取り組んでいかなくてはいけないことがたくさんあります。5カ年計画なので、計画当初に導入した機器類はすでに5年前の機器となっており、変化の著しい情報化社会では見直しが必要となっている部分もあります。情報システム最適化の取組みの目的は、最適なシステム環境を維持し続けるとともに、時代の要請に応じた新たな取組みにも効率的、効果的に対応していくところにあります。そうしたことを踏まえ、新たな計画を進めるべきかどうかを検討していく時期になっているといえます。
最適化計画に基づき、マルチベンダー環境における標準的なデータ連携の機能をもった情報基盤を構築しましたが、そこで導入した統合データベースが、業務データが集まったビッグデータとして、政策分析等に活用する取組みにつながりました。ホストコンピューター時代はデータの抽出や加工は容易にできず、他業務システムとの連携も個々に作りこむ必要がありましたが、情報システムをオープン化し、共通基盤を構築したことで、セキュアな環境下でのデータ利活用が可能となりました。国において、証拠に基づく政策立案「EBPM」を進める方針が打ち出されていますが、姫路市では、いち早くEBPMを推進できる仕組みが整ったので、今後、安全にデータを活用して、効率的で効果的な政策展開につなげていければと思います。」
榎本氏 「他の自治体との連携も今後の課題と言えます。全国的に情報システムを最適化しようという流れになっていますが、他の自治体様と最適化推進を通して体験した情報等を共有させて頂き、双方で高め合える関係を築いていければと思います。そして、流れの速い情報化社会についていくためには最新の情報を得ていかねばならないですが、私どもの力だけでは及ばない部分もあるため、さまざまな企業様にご協力いただきながら、最適な状態が維持できる環境への取り組みを続けていこうと思っています。」
お客さま
姫路市役所
兵庫県姫路市安田四丁目1番地
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